紛争予防の必要性
混沌圏で多発する地域紛争は従来の国際社会が対応した国家間紛争ではなく、国内紛争であるため、正規軍同士よりも、民兵間戦闘が通常である。国内紛争では、国際法による交戦ルールが存在しない。従って、残虐行為が横行し、一般民衆が殺害の対象となり、深刻な人権侵害から逃れようと多数の難民が発生する。民族間紛争では民族浄化に及ぶこともある。国内紛争は一度発生すると複雑化し、解決に多大な時間と犠牲、費用が必要である。そこで注目されるのが、紛争発生前の対応をめざす紛争予防である。
紛争予防活動の目的や手段、実施主体は様々である。紛争の発生が差し迫っていない平時の第1段階、紛争の発生が差し迫った危機状況の第2段階、紛争がすでに発生し、その拡大が懸念される第3段階、そして紛争はすでに終結したが、その再発が懸念される第4段階に分類して考えてみよう。紛争予防の目的は、(1)平和維持、(2)発生予防、(3)拡大予防、(4)再発予防の4段階からなる。実施手段は外交、経済、人道、軍事、民主化の5分野から各段階の目的に応じたものが選択される。実施主体は、国連、政府、NGO、メディア、企業、個人等、政治から草の根レベルまで多岐にわたる。近年、紛争予防の「包括的アプローチ」が注目されているが、これは上記のような対象段階、実施手段、実施主体における包括性を要請するアプローチのことである。
紛争予防成功の条件と課題
紛争予防が成功するためには全当事者が紛争発生を回避する意思を有し、国際社会提示の予防措置を受入れる用意を備えねばならない。他方、国際社会においても、当事者に受諾可能な措置を提示し、かつ全当事者に対し公平・中立でなければならない。
紛争予防を実際に展開するには、まず用語や定義、対象段階等の概念を明確にして理論枠組みを構築し、その上で、紛争予防に参加する各主体間の協力、役割分担を調整しなければならない。政治から草の根レベルまで網羅する有機的な共同作業により、効果的に紛争予防を達成できるからである。また、紛争予防には、紛争の発生が差し迫ったことを知らせる早期警報が重要だが、情報の集積・一元化、分析、発信を可能にする警報システムの構築及び複数の警報システム間調整が必要だ。現地に根をおろすNGOの活躍が望まれる分野だ。同時に発信された早期警報をいかに早期行動に結びつけるかも考慮すべきである。
現代の紛争被害者の大多数は子供と女性たち
国内紛争の予防には国家主権や領土保全と結びつく内政干渉の問題がついて回る。国際社会が一国の紛争に取り組むには、当事者からの同意を確保することが大前提となる。国内紛争の場合には、一般市民の犠牲者や難民が増大するが、ソマリアや旧ユーゴスラビアで見られたように、国際社会による救援活動自体も略奪の対象になりかねない。救援活動の安全確保を考えなければならない。
紛争終結後の元戦闘員の処遇も重要である。軍縮・武装解除・元戦闘員の社会復帰が達成されなければ紛争再発につながりかねない。少年兵問題も関わってくる。加えて、紛争予防の実施手段の細目についても、開発援助や経済制裁の手法、対象及びそれらの事後評価、強制措置の発動方法など未解決の課題は多い。