9月28日に始まったイスラエル-パレスティナ間の大規模な衝突は50日以上経過した今も収拾の目途が立たず、パレスティナ側にはこれまでに二百数十人の死者、七千人以上の負傷者が出ている。
イスラエル軍が駐屯するヨルダン川西岸地区やガザ地区の境界、パレスティナ自治区内のイスラエル人入植地等では、日々、パレスティナ人がイスラエル兵に向かって投石をし、銃撃戦に発展する。圧倒的な火力を持つイスラエル軍の攻撃にも関わらず、パレスティナ側は抵抗を止めない。犠牲者が出る度に憎しみが憎しみを呼ぶ。今回の衝突では、開始以来1ヶ月間の死者数がかつてのインティファーダ(民衆蜂起)での6ヶ月間のそれを上回った。
これらの係争地では少年達が投石をする姿が目立つ。彼らは「インティファーダの子ども達」と呼ばれる。1987年から1992年まで続いたイスラエル占領地でのインティファーダ時代前後に彼らは生まれた。デモに参加し投石をする大人達の背中を見て育った彼らは、今、当然のように投石に参加する。衝突による死者、負傷者の約6割が15歳以下の少年といわれている。
何故子ども達は石を投げるのか。
衝突開始から自治区は封鎖され、イスラエル側での労働により家族を養っている多くのパレスティナ人は失業状態にあり、自治区内の経済は悪化している。また犠牲者が出る度に抗議のデモやゼネストが行われ、学校も閉まる。家に帰れば、テレビでは一日中衝突の映像や犠牲者のニュースが流れる。この緊張・閉塞状況で青少年は行き場を失っている。
孤立感とフラストレーションを募らせる彼らには投石という表現手段しかない。なぜ子ども達を止めないのか、とある父親に尋ねると、「子ども達は、『僕達は命をかけて戦っているのに、父さん達は家に座ってコーヒーを飲んでテレビを見ているだけだ』と言うに決まっている」と答えた。大人達も彼らを止めることができない。
より深刻な問題を抱えているのは難民キャンプの子ども達である。高い失業率、貧困、人口過密、公共設備の不備、水の不足に悩むキャンプでの生活はさらに厳しい。青少年のための遊び場や文化活動は殆どなく、職にあぶれた青年や行き場のない子ども達の多くが投石に参加しがちだ。キャンプでは5、6歳の子ども達までが壁に向かって石投げの練習をしている光景を見る。
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イブダ文化センター内のコンピュータ教室 |
ベツレヘム近郊のデヘイシェ難民キャンプでは、キャンプ住民による青少年教育NGOイブダ(「創造性」の意味)が、子どものダンス・チーム、図書室、コンピューター教室など多岐にわたる活動をしている。
「子ども達を文化センターに引き止めることができれば、投石に行かせないですむ」と、代表者のズィアッド・アッバースは語る。簡単な遊びや物づくりをする場と機会さえあれば、子ども達は活き活きと創造性を発揮する。彼らは目を向けてくれる相手と自己実現の場を必要としている。
日本予防外交センターでは、イブダ文化センターへのコンピューター設備提供を計画しており、現地で活動する諸国際NGOスタッフと共に、投石防止のために青少年と交流するプログラムを実施している。
外交、民間レベルでの様々な努力にも関わらず、状勢は混迷を極め、解決への道は険しい。紛争を止めるためには、その根となるイスラエル-パレスティナ間の人権、経済、教育、生活レベルでの大きな隔差を埋めなければならない。
次世代を担う子ども達が、より人間的に育つために、また暴力ではなく建設的な表現方法で彼らの声を世界に訴えることができるよう、協働を模索することが国際社会に生きる市民の急務ではないだろうか。
以上
石塚 信弘
日本予防外交センター/中東代表事務所員(在パレスチナ)
2000年12月25日付 教育新聞オピニオン欄に掲載