| 当センターでは「少数民族に対する識字教育事業」を2001年より実施している。事業実施地域はカンボジア東北部に位置するラタナキリ州である。ラタナキリ州の人口約10万人のうち、8割は独自の言語(タンプーン語等)、生活様式、慣習をもつ少数民族で、公用語であるクメール語に対する識字率は極めて低い。経済基盤は移動式焼畑農業で、雨季には遠く離れた畑に居を移し耕作に従事し、乾季に本来の村に戻るという生活を送っている。 この地域には、学校が近くになく教師がいないこと、正規の学校教育システムが地域住民の生活様式にあっていないこと(昼間は畑仕事に従事)、正規教育が公用語であるクメール語で行われるため、児童はそれについていけないという問題を抱えている。 少数民族の人々は生活のあらゆる面でクメール語への理解を必要としている。例えば、収穫した農作物を市場で販売する際、顧客はクメール人が多いことから、クメール語理解は必須であるし、基礎的な計算能力も求められる。以上のような状況に鑑み、当センターは、クメール民族と少数民族の融和、識字率の向上に寄与することを目的に、識字教育事業に取り組んできた。 識字教育事業では、より多くの人々に教育の機会を与えるために、対象年齢に制限は設けず、学校は夜間開校としている。いわゆる政府が正式に認可して行っている正規教育ではなく、ノンフォーマル教育として事業を実施している。ラタナキリ州では、政府認可の正規教育を州全域にて実施するための教員数、学校設備、体制を備えていないため、州教育省はNGOが実施しているノンフォーマル教育を奨励し、事業拡大を求めている。 本事業の進捗状況の確認と教師への訓練を行うため、プノンペンから当センター職員が現地ラタナキリへ赴くことが多いが、道が舗装されていないなど道路事情は悪く、村までの移動に大変苦労している。 | 埃よけのために完全防備で移動するSopheak職員と筆者 | | 識字教育学校へ続く道、坂道が多く雨季には車での通行が困難 | また、地域住民の自主自立を支援し、教育に対する関心を持ちつづけてもらうことを目的に、教員は住民の中から選出し、校舎の建築も住民達自らの手で行ってもらっている。建築資材、太陽電池発電機、蛍光灯、黒板、机イスなどの設備、教科書、ノート、鉛筆、チョークなどの文房具は当センターが援助している。2003年2月には教員からの熱い要望でオリジナルTシャツを作成した。 | 当センター識字教育学校校舎 | | オリジナルTシャツを着る当センター識字教育事業担当Chhengly所員 | ラタナキリ州都バンルン(Bunlung)市にある当センターラタナキリ出張所には、識字教育事業スーパーバイザーとしてPeay所員が常駐し、教員養成訓練や教育方法の指導を行っている。具体的には、授業の進行に合わせて理解力テストを行い、生徒の理解度に応じた進級制度をとっている。 Peay所員は少数民族クルン族の出身で、元当センター識字教育学校の教員であった。彼の指導が非常に熱心であったこと、彼が教える識字教育学校の生徒の向上がめざましかったことから、2003年初頭に当センター識字教育事業スーパーバイザーとして抜擢し、現在8ヶ村で実施している識字教育事業を担当している。 余談になるが、2003年10月にPeay所員が当センタープノンペン事務所で、10日間の業務研修を受けたが、その誠実でまっすぐな人柄から、事務所スタッフの間で人気となり、次はいつ研修に来るのかと皆心待ちにしている。 報告者:鳴海ゆきの |