| 2003年7月27日は、123人の国会議員を選ぶ、5年に1度の総選挙の日です。1ヶ月間続いたにぎやかな各政党の選挙キャンペーンも、前夜で終り、今は静かな街に戻って、明日の投票日を迎えております。投票は朝7時から、全国約12,500ヶ所の投票所で、午後3時まで行われます。開票は翌日です。1993年に、国連(UNTAC)統治の下で初めての総選挙が行われ、今回は3回目になります。選挙民の関心も高く、熱気のあふれた選挙戦が展開されました。 日本紛争予防センター(JCCP)では、日本政府の監視団とは別に、今回の選挙に対して、日本からボランティアの選挙監視員を募り、現地参加を加えて、15名のJCCP選挙監視団を結成しました。7月21日から監視活動を開始し、投票日の翌日まで活動を行ないます。具体的な活動は、投票所で投票現場に立会い、投票が正しく行われるか、開票、集計が公正に行われるかを監視するのがメインの行事ですが、実は、それ以外にも、選挙運動期間中の各政党の街頭、集会所などでのキャンペーン活動の様子、キャンペーングループ同士の衝突、妨害行為、政府、警察の対応、マスコミのチェックなど、更には表には出にくい選挙違反(例えば強要、買収、供応、紛争、当局の過剰介入など)も、他の国際選挙監視団と協調して調査しています。活動結果は報告書にまとめ、各関係機関に提出して理解を求めると同時に、今後の改善の参考資料としてもらう予定です。 選挙戦の様相は、現在政権を握っているフンセン首相率いる人民党(CPP)が政治実績をバックに有利に戦いを進めているといわれていますが、欧米流民主主義の実現を掲げたサムランシー氏率いるサムランシー党(SRP)が都市部を中心にして人気を得てきており、どれだけ迫るのかが注目されています。現在の連立与党であるシアヌーク国王の子息ラナリット殿下党首のフンシンペック党は、特に有権者をひきつける魅力ある政策が打ち出せず、更に顧問が選挙期間中に暗殺される事故もあり、苦戦を強いられているようです。 元来カンボジア人は政治に関心が高く(経済より政治)一般に政治談義には熱が入ります。それが昂じて、取っ組み合いになることもまれではありません。連日政治的理由による(と思われる)殺傷事件が新聞紙上、カラー写真入りで、生々しく報道されています(但し警察の公式発表では、これら事件の原因は、大抵は物取り強盗か怨恨のための事件として取り扱われていますが)。それでも、今回は、過去の93年のポルポト派による選挙ボイコットや98年のCPP党とフンシンペック党の衝突のような、組織的な大きな事件は起こっておりません。それだけ制度が定着してきたと言ってもよいでしょう。 選挙運動最終日の夜に、プノンペン市中心街で繰り広げられたサムランシー党の行進は、キャンペーンカー数十台を連ね、支持者がスローガンの入ったお揃いの白いT-シャツを着て、キャンドルを振りかざし、さながらフェスティバルのパレードのようでした。サポーターを含む民衆も熱狂してこれに応えていましたが、集まった人数の割には整然としており、大した混乱はありませんでした。むしろ喧騒の中に新しい国づくりを熱望する人たちの息吹が感じられるほどでした。 申すまでもなく、国民の政治参加の機会が与えられる選挙は民主政治の出発点で、これを成功させることによって、国民の間の信頼と自信を取り戻し、現在この国が置かれている厳しい状況を打開する道が見えてくるかも知れません。この意味で今回の総選挙が将来の方向を見定める重要な試金石となるでしょう。願わくは明日に迫った投票、開票がスムーズに行き、民意が本当に反映された結果が出て、更にはその後にも不測の事態が起こらないことを願うばかりです。明日は天気もよさそうです。 報告者:田中 剛 |