| アフガニスタンで、治安確保を目指す政府のDDR計画が、政治的な意見の一致を得られず、難航する中、今回は、首都カブールの人々のエネルギーを感じさせる話題です。 カブールにはトレーニング・ジムが、大小あわせると30~50もあるそうです。「カブールにジムが?」と思う人もいるかもしれませんが、ジムの中は、なかなか盛況です。 カブール市北部のヘルハナ地区のトップマン・ジムは、大規模なジムの一つで、会員数約250名、25㎡ほどの地下室に、トレーニング・マシーンが20弱、ずらりと並んでいます。加えて、ダンベルやバーベルなどフリーウェイトも一通りそろっています(これら、ほとんどはパキスタン製だそうです)。床には、絨毯が敷いてあり、ジム内はこざっぱりした印象です。一角には、ミネラルウォーターや筋肉増強剤(プロテイン)などと共にチャイ(アフガニスタン人の好きなお茶)を売るカウンターもあります。会費は、月々250アフガニー(約500円)で、入会時のみ二か月分を払い込みます。営業時間は金曜日(休日)を除く毎日、朝6時から夜9時までです。通ってくる人も様々で、夕方に顔を出すと、仕事帰りの人、学生、失業者などが、トレーニングに励んでいます。体型も筋肉質の人から、骨ばった人まで、多種多様です。こんなに色々な人達が、しかも復興段階にあるこの国で、一生懸命汗を流しているのを見ると、スポーツってやっぱり万人に平等なんだなと、ちょっと感動します。 日本のジムと違うところは、室内にアフガン・ミュージックやインドのウルドゥー・ミュージックがかかっていること(いずれも、アップテンポのもので、トレーニングに支障はありません)、時間になると、一部の人が(ほんの2~3人です)、隅でお祈りを始めること、ほとんど皆、裸足でトレーニングしていること(安全面から言うと、靴を履いていたほうがいいのですが)です。服装は、皆、長ズボンかトンバン(ゆったりしたアフガニスタンのズボン)ですが、肉体の美醜に関わらず上半身裸の人も多いです。肌を人前にさらすのを避けるこの国の文化の中では、いささか奇異な感じもします。壁は、もちろん鏡張りで、自己陶酔気味に自分の体を見つめながら鍛錬に励む人も多く見られます。トレーニングに励む理由を、何人かに尋ねると、「自分の体を美しく保ちたい」という答えが、ほとんどです。「美しい肉体を他人に披露する機会が皆無では?」とも思いますが、ブルカをかぶった、この国の女性の中にも髪型にこだわる人が案外多いという話です。日本でも、帝釈天の軒下に左甚五郎が精魂込めて彫り物をしたことを考えると、両国に共通する東洋の奥深さを感じます。 ジムは、また、格好の社交場でもあります。同じ時間には、だいたい同じ顔ぶれがそろっていて、トレーニングの合間を縫って、話をしたり、鏡に他人と自分の姿を映して比べてみたり様々です。どちらかというと、個人個人がそれぞれのトレーニングに集中するというよりは、隣でトレーニングしている人に、トレーニング方法を尋ねたり、トレーニングの補助を頼んだり、全体的に和気藹々とした雰囲気です。また、現地語(ダリ語)のいい勉強にもなります。肩(ショナー)とか、胸(スィナー)とか、腕(ボズー)など体の部位の言い方は、ここで覚えました。時には、おせっかいな人もいて、人の筋肉の張り具合をチェックしたり、バーベルのグリップ位置を注意したりもします。そんな時は笑顔で「タシャクル(ありがとう)。ところで、ここの筋肉はダリ語でなんて言うの?」と返します。すると、相手は「ショナー、ショナー(「肩」だよ)」と笑顔で答えます。こんな場面も、娯楽の限られたカブールでは、いい生活のストレス解消となり、ほっと一息つける貴重なひと時です。 報告者:菊池 宣洋 |