2003年度紛争予防市民大学院「海外研修コース」研修日誌
第5週:11月24日(月)-11月29日(土)
報告者:山田 浩史


11月24日(月)
コロンボ発Lionairにて1時間のフライト、ジャフナへ、Danish Demining Group (DDG) Project site視察(Point Pedro)、UNDP Mine Action Project Office訪問、Varani Village (Sanderabrew)視察

 いよいよ北部、ジャフナだ。High Security Zone(HSZ)内の空港らしく、飛行機を下りてからチェックポイントまで兵士が同行する。セワランカ財団のShiva氏が出迎えてくれる。今週はセワランカ財団のワゴンにお世話になるが、この運転手はJCCPの運転手より猛者。クラクションとハイビームで道行くものを蹴散らしぶっ飛ばす。街にはLTTEのカラーである赤と黄の旗があふれ、ここはLTTEの支配地域かと見間違えるほどだ。26日はLTTE Pravakaran議長の誕生日、翌27日はLTTEの戦死者を祭るHeroes Dayを控えたものらしい。
 スリランカ最北端、インドまでわずか30kmというPoint PedroにDDG の地雷除去現場はあった。テクニカルアドバイザーの32歳のデンマーク人Janは27人のDeminerと2人のParamedicを指揮する。朝6時半から途中に朝食をはさんで午後2時までの作業が3週間を1サイクルとして進められるらしい。1人の死者も出していないというように、地域の人々と自分たちの安全を最優先に、システマティックに進めている様子が伺える。実際に作業現場を見ると緊張感と使命感を感じる。1ヶ月前からここで訓練中のJCCP辰巳氏と一志氏の2人は、今日の午前中に地雷を掘り当てたそうだ。お祝いの言葉をかけるが、住民が生活しているこの土地で、3日間で既に10数個の地雷が見つかることの只事ではない状況を思う。
 UNDPでは、ジャフナ地区13のHSZがジャフナ半島の25%、29,000世帯を覆っていること、スリランカ軍の埋設地雷が85%を占め、その多くが大体の法則性をもって分布していることを学んだ。和解や再建には地雷除去が不可欠であるというスタンスから、紛争段階で行う地雷アクションは、紛争への介入にセンシティブなUNにあってユニークである。
 セワランカ財団がプロジェクトを行っているバラニという480世帯の村では、20数人が我々を出迎え、村の窮状を口々に訴える。紛争中の10年間、村人たちは避難をしていたが、政府による再定住を嫌い2年前に故郷に戻ってきたものの、ヒンズー寺院や学校や家屋の多くが破壊されていた。政府の戦いによって破壊され、政府支配地域にいても実際は再建のための支援を得られていない。切れた電線がぶら下がったままの電柱、自分の家が破壊され親戚の家に身を寄せたままの人。「自分たちが平和に暮らせるのならば政府でもLTTEでも構わない」という村人の言葉に大きくうなずく。「自分の土地で普通に暮らしたい」という願いは素朴なものではないのだろうか。我々を椅子に通して自分達は土間に座り、この村の窮状を訴え学校修復の嘆願書?を手渡す村人たち。日本人が支援してくれることへの期待に最大の関心を持って集まっている中での受け答えの難しさを思う。

DDGによる地雷除去活動のブリーフィング

 

11月25日(火)
Secretariat for Immediate Humanitarian and Rehabilitation Needs in the North and East (SIHRN)訪問、LTTE(Peace Secretariat、Administrative Office)訪問


 LTTE支配地域へ。ジャフナからキリノッチへの移動中、街の道路脇に立つ兵士や警察の数が格段に増える。1.5時間ほど走りチェックポイントに近づく。緩衝地帯を抜けLTTE支配地域に入る際には、簡単ながら荷物検査もあった。LTTE側に入り道が良くなったA9沿いには、鉄条網と地雷マーク、そして鮮やかに眩しい赤と黄色の旗が並ぶ。決して落ち着く色の組み合わせではない。エレファントパスでは、壊れた家屋が点在し錆びた戦車が放置され、砲撃で頭を飛ばされたヤシの木(パルミラ)が林立する。戦争の傷跡のこうした風景からは、なぜか血生臭さではなく、遺跡を訪れた時のような感覚を覚える。ちなみにLTTE支配地域はスリランカ時間より-30分。小さい島で経度も同じなのにそこまで差異化したいのかと訝しく思ったが、スリランカが元々採用していた時間であるらしい。
 SIHRNは緊急人道援助を行う機関であり、政府とLTTEそれぞれ7人ずつから構成されている。政治的機関でありながら法的根拠がないため、仕組みと実行性にギャップがあることが述べられた。話をしてくれたIreneuss氏の右手は人差し指しかなかった。紛争によるものであろうか、うまく表現できないが、それぞれが過去を持ちそして現在いることを、氏の話す姿を見て思った。
 LTTEを訪問、最初に訪れたPeace Secretariatでは、話をしてくれたのは同席者も含め全て女性だった。ソフトで物静かだが、必要最小限しかしゃべらず個人的な見解を聞いても答えてくれない。何と聞いたらよいものか一同なかなか質問が言葉にならない。「平和を望むが戦うしか選択肢がなかったので平和への取り組みは難しくない」と述べられた中で、平和の定義として、「恐れのない普通の生活をおくること」としたが、同時に「Peace, with Justice」と述べられたことが印象深い。また、スリランカの政府支配地域、政府、軍をそれぞれ南部、シンハラ政府、シンハラ軍と言うところに、立場の隔たりを感じる。
 続いて、Administrative Officeへ。紛争中にこの地域における国の行政が機能しなかったので、自分たちで行う必要があったが、今ではスリランカ政府と政治的に協力し、政府事業がうまく行われるようにモニタリングを行っているという。キリノッチ地区オフィスの建物の中を案内され、組織として整っており、女性職員も数多くいることが分かったが、LTTEを訪問したという実感を具体的に持てないままオフィスを後にした。

砲撃で頭を飛ばされたヤシの木(パルミラ)

 

11月26日(水)
UNHCR Jaffna Office訪問、AMDA Jaffna Office訪問、Sewalanka Project視察

 今日はラマダンで休日、またLTTEプラバカラン議長の誕生日でもある。どこも閉まり、朝から軍歌のような?レトロな音楽がスピーカーから町に流れる。プラバカラン議長の写真カレンダーや飴を配る人たちがいる。こんな日にも関わらず訪れた我々を迎えてくれた方々に感謝。
 UNHCRのAgron氏はコソボ出身。「スリランカの状態はコソボや他の地域と比べたら格段に良いといわれる」、「どの国際機関も襲撃されたことはなく、当事者双方から受け入れられている」、「ジャフナにシンハラ人が観光に来たり、政府軍の兵士が地元のタミル人と話している状況は紛争地域にいるとは思えない」との楽観的な分析が興味深い。
 セワランカ財団のプロジェクト視察は、灌漑用の溜池(Ponnalai Periyakulam)と、内瀬に造った水門など、世銀プロジェクトのNEIAPである。村の入り口で兵士によるチェックがあり、そのような中で広大に広がる溜池に紛争予防と開発支援の具体的な現場を見た。
 

11月27日(木)
GTZ Jaffna Office訪問、Sewalanka Project視察、ジャフナ発Lionairにてコロンボへ

 あちこちで病院やプロジェクトの看板にGTZマークを見かけた。GTZは7年前からジャフナで活動している。貯水槽建設などのハード面によるリハビリテーションが中心であるが、Do No Harmを考慮したユニットを持つなど、鮮やかだ。
 セワランカ財団のプロジェクト視察に行く。3ヶ月ほど前に始まったばかりのプロジェクトで、村人に行ったニーズアセスメントについて説明を受ける。40名ほどの村人から歓迎を受け、村長以下数名が代わる代わる挨拶をする。戦後復興の成功例として日本に対する賞賛を強く受ける。日本の開発経験についても勉強が必要だ。
 実際にジャフナ市街を散策したかったのだが、今日はLTTEのHeroes Dayのため、マーケットは軒並み休業で、町の様子を見ることもお土産を買うこともできなかったことが残念だ。
 
11月28日(金)
Police Head Quarters, Mr. Chandra Fernando (Senior Deputy Inspector General of Police) による講義

 警察庁主席副長官のフェナンド氏は、絶え間なく電話の鳴る中、とても親切に話の時間をつくってくれた。事実に基づく整然とした説明に、時間の経過を忘れてしまう。交通マナーの悪さは、これまで内戦のため国家のセキュリティーに資源を集中し、その間に増える自動車への対策が取れなかったことが要因であるとのこと。ここにも紛争の影響があった。スピードと安全は両立するものではなく、社会への教育が必要であることを言われる。また、自殺率が世界一で若年層の恋愛にからむものが多いとのこと。カーストや民族などが、オープンではないが続いている社会の背景がある。
 
11月29日(土)

 JCCPスリランカ事務所での演習では、今週の地方視察(ジャフナ、キリノッチ)の感想、および論文テーマとインタビュー先の確認を行った。これで地方視察は終わり。来週1週間はこれまでの5週間のまとめとして研修報告書作成に取り掛かることになる。
以上     
 

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