人道的地雷除去活動を通じての人材育成 | 2005/8/1 | この度、健康上の理由によりスリランカから日本に帰国し静養することになった。スリランカ人道的地雷除去プロジェクトの初期調査・立ち上げ・運営まで一貫して担当してきた私としては、途中離脱することは断腸の思いである。2002年10月以来3年弱の間、本プロジェクトに従事してきた経験から、私の人道的地雷除去活動に対する思いを以下に記述する。 私がスリランカの地雷除去プロジェクトを運営するに当たり重視してきたことは、現地スタッフ(スリランカ人スタッフ)の育成である。それに尽きると言っても良い。地雷除去プロジェクトにおいては、地雷除去要員が危険な地雷除去作業を行うに際し、決められた除去手順を正確に行うことが前提となる。地雷除去の知識も経験もないスリランカ人を数十人雇用してゼロから一人前の地雷除去要員に育て上げる作業は、地雷除去プロジェクトの主要な部分を占める。それは4週間の地雷除去訓練コースが終了したら終わるものではない。訓練後の除去活動中においても、より完璧な作業を全地雷除去要員が行えるよう教育訓練を継続する。地雷除去プロジェクトで勤務する現地スタッフには、地雷除去要員以外に、医療担当者、セクションリーダー、チームリーダー、通訳、ドライバー、オフィス勤務者などの役職があり、各人がそれぞれの役割をより効率的に実施できることが地雷除去プロジェクト成功の鍵である。 最初の現地スタッフを雇用してから一年半が経過した現在、現地スタッフの勤務態度は当初に比べると格段に良くなった。最初の頃は指示したことも満足に実施できないことが多かったが、最近は指示したことを100%実施するだけではなく+α何かより良いことを実施しようという意識を持つようになった。また、現地スタッフの幾人かは、自分から問題を提起し、日本人スタッフが忘れていた事項も補填できるようになった。 これはスリランカ人に日本人の仕事のやり方を押し付けるものではない。彼ら自身が地雷除去プロジェクトをとおして、当たり前のように約束や時間を守り、誠実に正直に一生懸命自分の役割を全うするようになることを願うだけである。本地雷除去プロジェクト終了後、彼らがどこの組織で仕事をするようになっても、他のスリランカ人とは一味違う何か光るものを持ち信頼を得て昇進し、より良い組織人・社会人・家庭人となることを願うだけである。 現地スタッフの何人かは、JCCPの地雷除去プロジェクトに従事してから生活態度に変化が見え始め、彼らを以前から知る友人・隣人・家族などは、彼らを尊敬し始めているという。そのような良い生活態度ができる現地スタッフが小さな発信源となり、家族や地域社会に良い影響を与えてくれるようである。その変化を見た彼らの友人は、「是非自分もJCCPの地雷除去プロジェクトの一員になり、自分を成長させたい」と言って地雷除去要員を採用するための就職面接に来るようになった。今、そのような現地スタッフの仕事に対する姿勢、価値観、人生観が少しずつ広がり始め、地域社会の活性化にいくらか寄与していると私は考える。 平和構築、開発援助の国際協力において、最も重要なのは、「投げやりにならずに努力を続ける資質」、言い換えれば「今は駄目でも日々少しずつでも状況を良くして行こうと思える資質」を紛争国の人々の心に芽生えさせる事であると私は考える。これが本地雷除去プロジェクトを通して私がやりたかった事である。現地スタッフと共に仕事をしたのは1年半という短い期間であったが、いくらか達成できたと思う。今、スリランカから離れた身ではあるが、何年か後に再度スリランカを訪問したい。そのときに、今より成長し出世した彼らと再会するのが私の最大の楽しみである。 スリランカ人道的地雷除去プロジェクト シニアテクニカルアドバイザー 辰巳 竜悟 |