21世紀へのキーワード・「異和」
2001/2/20

 冷戦後は世界各地で地域紛争が頻発し、「熱戦」が繰り広げられている。これら地域紛争は民族間・宗教間の対立と言われ、一見その様に見え又そう規定すると理解しやすいが、実際中に入ってみるとそうでは無い。基本的には政治的利害関係の争いであり、又権力(利益)の争いである。ここで何時も被害者は一般庶民で、特に婦人・子供が最大の被害者である。草の根レベルの人々は、昔から共存してきた経験がある。種々の差別も政治化され、又先鋭化されると武力衝突となる。

 ここスリランカでの紛争もご多分にもれず、シンハラ(仏教)・タミール(ヒンズー)・モスレム(イスラーム)の対立と言われるが、実は根源的には民族・宗教の対立では無く、「多数派」と「少数派」間の「差別」問題であり、「人権」の問題である。全ての人が同等の権利と義務を保障されるシステムを構築することが最良の解決策で、その為には広汎な人々を巻き込んだ平和構築運動は欠かせない。この運動はまず対話を通して相互理解を図り、相互容認/受容、和解、共存/共生へと導く、地道な人間開発運動でもある。

 この対話に際して、言語が大きな障壁となっており、シンハラ人・モスレム(シンハラ語)とタミール人(タミール語)の間のコミュニケイション・ギャップを生んでいる。意思疎通の欠如は相互に疑心暗鬼を生み、相互不信を生み出す大きな要因の一つである。一方、北東部では政府とLTTE(タミールの虎、反政府)の抗争により社会経済的インフラストラクチャーが破壊され、同地域の青年は教育と就職の機会に乏しく、夢と希望を失った失業青年があふれている。これら青年はする事も無く、少しでも食事と収入を確保する為に、シンハラ青年は政府軍に、タミール青年はLTTEに入隊することを余儀無くされている、と言われている。こうした青年に教育の機会を与え、手に職を持たせて経済的自立を図ることは、次代を担う青年に夢を持たせるのに不可欠である。

 こうした状況下で日本予防外交センターはピース・メッセンジャーとして、

  1. 紛争予防ワークショップ(国会議員対象、地方議員対象、一般住民対象)、
  2. 民生安定活動(緊急援助、定住援助、地域開発)、
  3. 予防外交研修

 等各種平和構築活動を地元NGOと協力して展開している。

 翻って見るに、わが日本はどうだろうか?同言語・同質・均一社会と言われるが、「在日韓国・朝鮮人」、「アイヌ」、「同和」問題等「差別」問題が存在する。異なったものに対する拒否・排外意識は強い。象徴的なものは「同和」で、同じものが和するのは当然簡単で、この意味するところは多数派が少数派を飲み込んで同化してしまう、つまり少数派が多数派に和せざるを得ないことを表している。しかし大事なのは異なった者同士がお互いの違い(価値と存在)を容認し、受容する事にあり、「異和」こそがなされなければならない意識改革である。「登校拒否」や「学級崩壊」も実は同根である。

 日本が21世紀に世界で活躍し、良きパートナーとして他国に認められるには、価値の多様性/異質性を容認し、受容する意識改革をしなければならない。

 多民族・多宗教・多言語の故に混沌としたスリランカに居ると、同質・均一の殻の中に生きる日本の将来が逆に心配されるこの頃である。

 

野崎威三男

日本予防外交センター/南西アジア代表(在スリランカ)

3月1日付 教育新聞オピニオン欄に掲載

以上

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