アフガニスタン復興支援と治安問題 | 2003/5/2 | 現在、アフガニスタン復興支援のために、20以上の国連諸機関、500とも700ともいわれる各国NGO諸団体がカブールを拠点として、各地方でそれぞれの支援活動を展開している。因みに、日本のNGO団体では、約20団体が一昨年末より学校修復、住宅支援、医療支援、教育支援、職業訓練等々の分野にて自己資金、日本政府、国連の基金を活用しながら展開をしている。これらに加えて、事務所は設置していないが、短期間カブール、地方に滞在し、支援活動に従事している団体は数知れない。 しかし、これら活動の多くはカブール、マザリシャリーフ、ジェララバッド、カンダハール、ヘラットといった都市及びその近郊が中心であり、最も支援を必要とする地方にはその範囲が及んでいないのが実態である。この要因には、アクセスの問題、輸送手段の問題等があるが、最大要因はそれら地方及びそこに至るまでの治安問題にある。アフガニスタンには未だ500以上の軍閥(最近の国連調査では総勢約10万人、但し、軍閥が発表する数字を合計すると15万~20万人となる。この理由は、これら軍閥には中央政府より兵士の給与が支給されており、水増しがなされていることの結果と言われている。)、それに大きく分けて15~20の反政府、反西側諸国ゲリラ組織(約2~3万人)が存在し、各軍閥間の武力抗争、それら軍閥下部組織及びゲリラ組織による国連、国際NGO事務所襲撃、金品強奪、輸送物資略奪が頻繁に起こっている。これに加えて、本年になってタリバン残党(アルカイダ)の多くが北部、南部に潜入してきており、再結集の兆しが強くなりつつあると同時に、既に活動に入っている。3月末、カンダハール近郊に於いて、タリバン組織(40~50名)が通行検問所を設け、全ての車両の検問を実施し、折悪しくもICRC(赤十字国際委員会)の2台の車が停止を命じられ、同乗していた本部職員は尋問の上射殺され、アフガニスタン職員は今後西側のいかなる団体にも協力しないことを条件に釈放されるという事件が発生した。この事件は、現場の指揮官の判断だけで発生したものではなく、現場よりタリバン組織の上層部に電話にて指示を仰ぎ、その結果発生した組織的なものである。数日後、タリバン組織は声明を発表し、この事件を手始めにタリバン組織はアフガニスタン暫定政権、西側諸国の諸団体に対し、テロ行為を活発化させると述べたことより、国連及び国際支援機関に大きな衝撃を与えている。事件発生後、カンダハール知事管轄下にある軍隊(約800名)がタリバン掃討に派遣されたが、その成果は現在迄に何ら発表されていない。 アフガニスタン全体の治安状況は、毎週土曜日に開催される国連治安担当部門の報告会、毎週火曜日に開催される国際NGO事務局に所属する治安関係NGOの報告会があり、これらの報告を基に各団体は状況を把握し、該当地域での活動を適宜見直しているが、ここ数ヶ月間の状況を見ると状況は悪化しつつある。その結果、国連機関始め国際NGO団体の活動中断、撤退等が南部を中心に起こっている。首都カブールはISAF(国際治安支援部隊、22カ国にて構成、総勢約5,000人)、及びCJCMOTF(米軍の後方支援部隊、1,500~2,000人)が駐屯しており、24時間治安維持にあたっているので大きなテロ行為は現在のところ起こっていないが、それでも国連、部隊駐屯地に対するロケット攻撃及び爆破行為等は1週間に3、4件の割合で発生しており、軍用車に小型爆弾が仕掛けられ、軍人、通訳が負傷するといった事件も起こっている。アフガニスタンの治安状況は、大きく5地域に分けて把握するようになっているが、その中でもハイアラートに指定されているカンダハールを中心とする南東部(人種構成に於いてパシュトゥン地帯)の4月初旬より4月中旬に至る状況は、主なものだけでも以下の通りである。 | * | カンダハール地域の2民兵組織の上層部が会合を開き、アメリカ軍への攻撃及び小組織によるカンダハール、ヘルマンド、ザブル省内でのテロ行為を計画したとの信頼情報。 | | * | ヘルマンド知事が今年始め発生した米軍2名の殺人に関与していたか、事前に情報を知っていたこと、更に反アメリカ、反米軍のテロ行為に武器を渡していたとの信頼情報。 | | * | カンダハール知事が、タリバン残党及びタリバンに関与した人間に対して「10日以内に南部の各省より退去せよ、従わない場合は刑罰を与える」との声明を発表。しかし、未だ南部4省に数万人いるとされているタリバン関与者をどこに退去させるのかを巡って、カンダハール軍司令官と意見衝突。 | | * | タリバン組織がナウバフル、シンカイ地域を無衝突で管轄下に置き、今後、米軍乃至カルザイ政権に関与しているアフガニスタン人に、すぐに関与をやめなければ標的にすると声明。但し、このことは米軍、中央政府によって確認されていない。 | | * | トルガール地域に於いて約30名の民兵組織と米軍が武力衝突。15名の捕虜及び多数の武器、車両を捕獲。 | | * | ザマール地域に於いて警戒中の米軍が襲撃され、米軍の爆撃で11名の住民が死亡。 | | * | 米軍基地のあるコースト(Khost)省に於いてタリバン組織に属する4名がタクシーに爆弾を仕掛け爆破、4名死亡。 | | * | 地雷除去に関与している国際NGO事務所が10名の強盗に襲撃され、金品を強奪される。 | | * | カンダハール知事の親戚がパキスタン国境近くで襲われ、2名が死亡。 | | * | オートバイで旅行していたイタリア人男性が襲撃され、死亡。 | カンダハールを中心とする南東部はパシュトゥン人が多数を占める地域であり、カルザイ大統領の出身地でもあるが、半面、多くの反体制派が存在しており、タリバン(アルカイダ)と連携しながらアフガニスタン暫定政権打倒、西側諸国に対するテロ行為の動きを強めている。従い、欧米のNGO団体の中には活動中断、事務所閉鎖等の動きが出始めている。 この様な情勢下、「アフガニスタン復興促進には治安の安定が大前提」との判断により、2月中旬の東京会議に於いてDDR(武装解除・兵士の非動員化・社会復帰)プログラムが採択され、アフガニスタン暫定政府内に於いても推進委員会が設定され、国連UNAMAを中心として計画案が練られている。 このDDRプログラム促進に必要な第1年度予算(5,000万ドル)の内、日本は3,500万ドルを国連経由で供出することになっており、日本政府代表も決定している。しかしながら、現在に於いても最初の武装解除の仕方を巡って、国防省との意見統一が難航している。又、武装解除の仕方によっては各地方軍閥の反発を買い、武力衝突が起こる事も懸念されている。カルザイ大統領は本年度中に武装解除、兵士の非動員化を終わらせ、来年9月に総選挙を行うことを表明しているが、これが実行できるのかについて不安定要素を多く抱えている。このDDRプログラムが具体的に進んで行かなければ、国連、国際NGOの地方での復興支援事業が停滞し、最悪の場合、撤退との事になりかねず、アフガニスタン復興は未だ遠い道程にあると言わざるを得ない。 報告者:笹井 英毅 |