キリノッチ・ジャフナ地雷除去状況
2003/11/4

 9月25日に地雷除去プロジェクトのリエゾン・オフィサーとしてバブニアに着任した小職は、10月6日から9日にかけて、推定900,000個の地雷が敷設され、スリランカで最も地雷の被害が大きいといわれているキリノッチ、ジャフナ地域へと出張した。出張の主な目的は、我々のプロジェクトの地雷除去テクニカルアドバイザー候補である辰巳・一志職員の参加するDanish Demining Group (DDG)の地雷除去訓練の視察、キリノッチ、ジャフナで展開中の地雷除去NGOによる地雷除去プロジェクトの視察、並びに地雷被害者関連施設の視察であった。ここでは、4日間にわたる出張で見聞したことを通じ、LTTE支配地域であるキリノッチ及び政府支配地域であるジャフナの地雷除去作業の現状を紹介したいと思う。

【キリノッチ】
 10月6日、8時過ぎにバブニアを出発。バブニアを北上すること約30分、政府軍のチェックポイントにさしかかり、そこを通過するとすぐにLTTEのチェックポイントに入った。チェックポイントを過ぎてから更に1時間半ほど北上し、10時(LTTE支配地域時間。政府支配地域とLTTE支配地域では30分の時差がある。LTTE支配地域が30分behind)にキリノッチに到着。キリノッチでは、6日から7日にかけてNorwegian People’s Aid (NPA)の地雷除去プロジェクトの視察をおこなった。
 
LTTE支配地域では、LTTE傘下のNGOであるTamil Rehabilitation Organization(TRO)が地雷除去のアドミニストレーションの統括、TRO傘下のHumanitarian Demining Unit (HDU)が実際の地雷除去、そしてNPAを初めとする他の国際地雷除去NGOが技術アドバイザーとしての役割を担っている。すなわち、政府支配地域では国際地雷除去NGOがある程度主導権を握りプロジェクトを実施できるのに対し、LTTE支配地域では、既存の体制の下で実施される地雷除去が国際基準を満たすよう技術指導を行うにとどまる。このような体制の下プロジェクトを実施することは、政府支配地域で地雷除去活動をするのに比べて色々と難しい点がある一方で、HDUのディマイナーは規律があるので、その意味においてはやりやすいとNPAのプログラムマネージャーのMr. Atkinsonは述べていた。
 NPAには3つの地雷原に案内してもらった。最初の地雷原では、ちょうど午前の地雷除去作業が終了したところで、ディマイナーが実際に地雷除去をしている姿を見ることはできなかったが、地雷原においてどのようにマーキングが行われているかを見ることができた。地雷原では、地雷除去作業が終了した場所、まだ終了していない場所、休憩場所などが一目で分かるよう、色や高さの違う木杭を使って明確に表示している。地雷が見つかった箇所には上部が黄色に塗られた約65cmの木杭が立てられるが、視察した地雷原では、この黄色い木杭が集中的かつ規則的に列をなしているのを散見した。これをマイン・ベルトといい、敵の侵攻をふせぐために、地雷を盛土などの防御線と平行に、規則的に敷設するという防御手法である。一般にマイン・ベルトは、地雷の埋設数は多いものの埋設パターンがある程度決まっていることから、その除去は比較的簡単であるとのことであった。

地雷原にあるマイン・ベルト

 NPA(HDU)の地雷除去の特徴は、地雷探知機(ディテクター)を全く使用せず、2種類の熊手を使用することにある。熊手を使用した地雷除去方法は2002年にNPAが技術指導を開始する前からHDUが採用している方法で、NPAはこの熊手を使用した方法を否定せず、むしろ活かしつつ、HDUの技術を国際基準に引き上げる支援を行っているわけである。Mr. Atkinsonは「NPAは他の地雷除去NGOと比べ、現地の状況に合わせフレキシブルに対応しており、この熊手方式もコストパフォーマンスに優れているだけでなく、砂地の多いLTTE支配地域の地雷原でとても効果的である。この方法でNPA/HDUは過去一年間で12,510の不発弾、8,963の地雷を除去した」と語っていた。
 7日の午前には、ジャフナへ向かう途中、HDUの女性で構成される地雷除去チームの現場を視察する機会を得た。残念ながら訪問した時間が休憩時間と重なってしまい、除去作業を見ることはできなかったが、我々は女性ディマイナーと話すことができた。彼女たちは皆ハキハキしており、「地雷除去の仕事はつらいか」との質問に対しても、「人のための地雷除去であり、苦にならない」と笑顔で語った。彼女たちの多くは、元LTTE女性兵士といわれており(そのようなことを自分たちからは決して言わないが)、過去厳しい訓練を受けてきた彼女たちにとって、地雷除去がつらくないというのも納得のいくことであった。

女性ディマイナーたちから話を聞く小職


【ジャフナ】
(DDG地雷訓練視察)
 8日の午前、辰巳・一志職員の訓練を視察した。我々が訪問した日は訓練開始3日目の、あいにく一日中講義を行う日であり、DDGのテクニカルアドバイザーによる講義のみの視察となってしまった。しかし、講義の内容は小職の知識修得に役立ち、また、我々JCCP独自の訓練方法を模索するにあたって、どのような方法に効果があるのか等、大変参考になった。辰巳・一志職員はDDGのディマイナーに交じり真剣に講義に耳を傾けていた。また両職員は、よく短期間でこれだけしゃべれるようになったと感心するほどのタミル語でディマイナーたちと休憩時間に団欒していた。このような光景を目の当たりにし、今後我々がプロジェクトを実施するにあたり、ディマイナーたちと和やかな雰囲気のなか進めていけるであろうと強く確信した。

訓練の休憩時間にDDGのディマイナーたちと談笑する
辰巳職員(中央左)・一志職員(左)

(HALO Trust地雷除去視察)
 最終日、HALO Trustの地雷除去活動の視察を行った。HALO Trustでは、プログラムマネージャーのMr. Valon Kumnovaの計らいで、ジャフナにおける手掘りによる地雷除去現場2箇所、機械による地雷除去現場、また地雷爆破処理現場を見学することができた。
 Mr. Kumnovaの案内で、手掘りによる地雷除去現場の視察を行った。HALOでは、ディテクター、またディテクターの使えない場所では、スコップ等を使用して地雷除去が行われていた。続いて、ジャフナ市内の機械による地雷除去現場を視察した。ジャフナ市内は内戦の影響で地雷が瓦礫の下に埋もれてしまっている場合が多く、このような場合における地雷除去は、エクスカベータ(掘削機)やトラクタショベルなどの大型建設機械に頼らざるをえない。まず、これらの機械を使い、地雷の埋設が推定される場所を40センチほど、瓦礫や植物などをまるごと掘り下げる。そして、掘削された瓦礫や土は、トラックで地雷爆破処理現場に搬送され、HALO独自で開発し、日本の草の根無償資金援助にて購入された大型ロック・クラッシャーに入れられる。このロック・クラッシャーに土を入れ機械を作動すると、土に地雷が含まれていても、機械の中で安全に爆破される仕組みになっているとのことであった。残念ながら、今回はロック・クラッシャーが作動しているところを見ることができなかったが、Mr. Kumnovaがその仕組みについて詳しく説明してくれた。

当日除去された地雷を確認するMr. Kumnova。これらの地雷は、
地雷原の一角に保管され、1日の除去作業が終了した後、
地雷爆破処理場にて1つ1つ爆破される。

 最後に、ジャフナの中心部から少し離れた地雷爆破処理現場をたずね、HALOのディマイナーたちが、HALO独自で開発した地雷爆破器で1つ1つ地雷を爆破処理する現場に立ち会った。この地雷破壊器の構造はギロチンのそれと同じで、台に地雷を置き、紐でつるした重石を50mほど離れた距離から力を込めて引っ張り、その重石の落ちる力を利用して地雷を爆破させるというものである。かなり原始的な爆破方法であるが、この方法では、爆薬・雷管・導火線などを安全確認しながら設置し破壊する手間が省ける上に爆破費用が無料なので経済的である。HALOは多いときで1日150個の地雷をこの地雷破壊器で爆破処理するとのことであった。
 プログラムマネージャーのMr. Kumnovaは、コソボ出身の元兵士で、数々の国で地雷除去プロジェクトに携わってきた、豊富な経験を持つ、地雷除去の第一人者である。我々は彼に多くの質問をしたが、彼の経験と知識に裏付けられた説明はどれも説得力があった。また、「日本の地雷除去分野への国際貢献として、政府が外国の地雷除去NGOに資金を提供するだけではなく、日本のNGOが実際に地雷を除去するプロジェクトを開始することは歓迎すべきことだ。また、地雷除去技術は短期間で修得可能であり、組織として経験がないことはそれほど重要なことではない。」と我々を勇気付ける発言をしてくれた。
 HALO Trustは現在ジャフナで200名強のディマイナーを採用しているが、来年までにはその倍のディマイナーを確保し、2006年までにジャフナ全域の地雷撤去を終わらせることを目標にしているとのことであった。スリランカでの地雷除去プロジェクト立ち上げ時には数名いたインターナショナルスタッフも軌道に乗った今では2名のみであり、これだけ大掛かりなオペレーションを2名で確実にこなしているHALO Trustの実力に感嘆した。

(Jaffna Jaipur Centre for Disability Rehabilitation視察)
 ジャフナでは、Jaffna Jaipur Centre for Disability Rehabilitationを視察する機会を得た。同センターは過去にアメリカ政府、赤十字国際委員会(ICRC)の支援を受け、現在ではMotivation(イギリスのNGO)の技術協力を得ながら、地雷などにより手足を失った人のための義肢の製作および提供、また義肢をつけた人たちへのリハビリを行っている。同センターでは、ICRCの支援により導入されたポリプロピレン製の義肢、およびアルミ製の義肢を製作しており、ポリプロピレン製の義肢に限れば、毎年250の義足(アルミ製も大体同数)、120の義手を製作しているとのことであった。このセンターに来る義肢を必要とする人の90%は地雷被害者であるとのことで、私たちが見学したときにも、地雷で片足を失った人たちが3人(うち1人は自分の家の庭で地雷を踏んで負傷)がリハビリ中であった。このような人々に触れ、地雷のむごさ、また早急な地雷除去の必要性を痛感した。


【まとめ】
 今回の出張で、辰巳・一志職員のディマイナーとしての訓練参加の様子(今回は講義のみとなってしまったが)、NPA、HALO Trustという2つの国際地雷除去NGOの地雷除去活動を視察する機会に恵まれ、地雷除去が実際どのように行われているのかを見ることが出来たことのみならず、地雷除去というのは、その地雷除去NGOの取るアプローチ、その団体がおかれた環境などによってだいぶ変わるということも把握出来たことは大きな収穫であった。今後我々がプロジェクトを進めていくにあたり、今回の出張で得た知識と経験は大いに役立つであろうことを確信する。

報告者:野田 朋子  

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