| 開催日時 | 2007年6月1日(金) |
| タイトル | 東ティモールの政治情勢について |
| 講師 | 長谷川祐弘氏 (元国連事務総長特別代表(東チモール)) |
長谷川氏はまず去年(2006年)の4・5月に東ティモールの首都ディリで武力闘争が起った背景と根底にある要因を分析され、平和と国家構築が成就するには長期間かかることを指摘された。そして国連の指導のもと国際社会が一致団結して自由で公正な議会選挙が実施され民主主義の理念に基づいた統治体制が築きあげられるよう関与・支援していく必要性を述べました。
1999年の紛争後、独立を回復し、東ティモールは国際社会の支援の下、着実に平和構築と国家建設を進めてきたが、国家統治基盤はひよわで権力闘争を平和裏に処理できる能力と環境が整っていなかった。また国連安全保障理事会が、国連事務総長の勧告に反して、国連軍と国連警察を撤退させる決議を通してしまったことは重大な過ちであった。そして国連が平和維持部隊と警察隊を既に撤退してしまっており、2006年の5月に都ディリで暴動と武力闘争が激化すると国連としては平和維持隊と警察隊を既に撤退してしまっており、オーストラリアを主とした国際治安部隊に出動し鎮圧してもらう結果となった。長谷川氏は東ティモールで起った暴動と武力闘争の経過を顧みて、国連軍と警察隊の存在が紛争を長く経験してきた国々において民主主義国家造りを行う過程で国内の治安を維持していくためには非常に重要であることを力説しました。
暴動が起った直後に国連が真実解明のための独立調査委員会を設立して現地調査を行い、暴動時の刑事犯罪者の責任を追求するよう勧告したことは有意義であると長谷川氏は述べました。この勧告に従って東ティモ-ルの司法当局は国連の支援の下に前内務大臣ロバト氏を含む刑事犯罪を起したとみなされる軍事・警察当局の関係者の裁判を始めました。一方、アルカティリ前首相が率いるフレティリン(与党である東ティモール独立革命戦線)急進派は、暴動と武力闘争は政府転覆を意図する者たちが始めたので、その原因解明をまず行うべきであると国会を場で反論し始めました。こうして、今回の大統領選挙と議会選挙は今後の政権をどの政党そして指導者が担うかの政治闘争になっており情勢はなおも不安定であるとのことです。そして政権問題が解決されず治安が安定していないため、多くの住民が避難民キャンプや郊外から首都に戻れない状況が続いています。如何に東ティモールがこの政治的課題を乗り越えるかが注目されています。
国連安全保障理事会は東ティモ-ルの平和構築そして選挙支援をするために2006年8月に「国連東ティモ-ル統合ミッション(UNMIT)」を設立し、東ティモ-ルに対する平和構築支援活動を統合的に行っている。しかし政治的な闘争がいかにして平和的に解決されるかは国際治安部隊の駐留が必要であり、それと同時に政治、司法、経済、人道、社会面における平和構築支援活動が必要である。そして「法の支配」を確立するためには各々の支援国の理念、思想と価値観を有機的に統合していく必要性が新たな課題となってきたと指摘されました。
長谷川氏によると、4・5月に行われた大統領選挙の投票結果は予測していた通りであって、選挙民が自分の意思に従って投票された結果であるとのことです。しかし議会選挙は特定の指導者を対象とした大統領選と異なり多数の政党により戦われるので、投票結果は完結なもにはならない可能性があるとのことです。前大統領のグスマン氏の率いる東ティモール国家再建評議会(CNRT)が第一党になる可能性が強いが、東ティモール独立革命戦線・フレテリンは政権政党として残存出来るように選挙法改正も試みておりまた新たな集票活動をする思われ、公平な選挙を実現するために国連の役割が重要になってきているとのことです。具体的には選挙運動が行われる間の治安維持は周到に行われなくてはならず、選挙投票が自由に行われ、信頼されるような結果であるように監視するのみならず関与していく必要性があるとのことです。長谷川氏は東ティモールでは多くの人々が国連に中心的な役割を担ってほしいという強い願望を持っており、オーストラリアの率いる多国籍軍と1608人の国連警察官の存在は非常に大事であると指摘されました。
長谷川氏は東ティモールで暴動と武力闘争が起こる根底にある要因として指導者の権力欲と警察や国防軍といった治安機関の乱用、特権を得た官僚等政府関係者の汚職、そして指導者による民主主義と法の支配の理念の軽視を指摘して、紛争の再発防止の観点から、国際社会は議会選挙を公明正大に行えるように関与していくと共に、治安維持に責任のある警察そして軍隊のセキュリティー・セクター・リフォーム(SSR)、真実・公平・正義を確立するための司法機関の独立と尊厳の確保、透明で説明責任を果たせる政府の理念と価値観の育成、そして民主主義政治の理念の確立の為に支援していく必要があると述べられました。そのために日本が世界の各地で展開している平和構築支援活動をより効果的に実施するためには、国連平和維持・構築活動に従事していける行政官や司法官などの要請が急務であると指摘しました。
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