スリランカ政情報告
2001/9/4

 今回は8月のスリランカ政治情勢のなかで空港襲撃の影響および政局混乱の行方に焦点をあて、報告したい。

1.空港襲撃がスリランカ経済に与えた影響 -観光業、貿易業を中心に-

 2001年7月24日未明、タミール・イーラム解放のトラ(Liberation Tigers of Tamil Eelam; LTTE)によるコロンボ国際空港が襲撃され、軍用機および民間ジャンボ旅客機等合計11機が爆破された。この事件で政府軍兵士7名、LTTE戦闘員14名が死亡したが、民間人・観光客等に犠牲者は出なかった。現地新聞報道によると被害額は3億5000万米ドル(420億円)にも上った。しかし、この空港襲撃事件は上記の直接的・物質的損害だけにはとどまらずスリランカ経済全体に大きな影響を与えた。その中でも特に深刻な影響を受けているのが、観光業と貿易業である。この二つの産業はスリランカの主な外貨収入源であり、重要な産業である。空港襲撃とそれによる治安悪化の不安からヨーロッパからの観光客が激減し、コロンボ市内および近郊リゾートのホテルはがらがらだ。コロンボより南へ45分ほど行ったリゾート地カルタラ(Kalutara)でペンションを経営するハーマンズ夫妻は次のように語った。「12月までの予約はすべてキャンセルになってしまいました。今はもうがらがらです。」これは、カルタラ地域に限ったことではなくスリランカ全国のリゾートホテルで深刻な状況となっている。現地新聞報道によるとキールズ、アイトケン・スペンス、ジェットウィングなどの大型ホテル・チェーンでは8月中の宿泊予約の90%がキャンセルされた。これから一番の稼ぎ時となるクリスマスシーズンを迎える各ホテルにとってこれは深刻な問題となっており、今後、倒産・解雇などの社会的混乱が拡大する可能性が指摘されている。政府は新聞やテレビなどのメディアを通して、治安に関しての不安を解消しようと躍起になっているが、実際観光客を呼び戻すまでにはいたっていない。
 保険会社各社はスリランカにおける事業安全性の懸念から海運・航空運輸の保険料を軒並み大幅に値上げし、それが航空券価格や海運料金に上乗せされ、路線によっては空港襲撃事件前の2倍まで価格が高騰している。スリランカは地理的にヨーロッパとアジアを結ぶ海運の要所に位置し、中継貿易地として発展し、スリランカ経済を長い間支えてきた。しかし、そのコロンボ港でも安全上の理由と保険料の大幅値上げにより同港へ寄航する貨物船の数が激減し、8月の貨物取扱量は例年比60%減となった。その後、スリランカ政府の働きかけにより保険料の高騰は沈静化したが、この事件は内戦問題に由来するスリランカ経済の不安定さを改めて浮き彫りにした。

2.スリランカ政局混乱の行方

 少数与党に陥っている人民連合(People’s Alliance; PA)は事態打開のため7月26日に野党各党首に向けて政策提携について協議するための会談申し入れを行った。最大野党の国民統一党(United National Party; UNP)およびタミル諸政党は会談を拒否し、国民投票の完全中止と国会の即時再開を訴えた。8月10日には野党第2党の人民解放戦線(Janatha Vimukthi Peramuna; JVP)と大統領の会談が実現し、JVPは条件付ながら閣外協力という形で与党を支持していくと表明した。大統領はJVPの要求した条件についての回答を8月末までに行うと通告した。ウィクラマヤーナカ首相の提案によりようやく8月25日に大統領と最大野党UNPのウィクラマシンハ総裁との公式協議が実現したが、3回にわたる協議は結局物別れに終わり、政策提携は実現できなかった。これにより選択肢のなくなった与党PAはJVPの要求を受け入れ、10月に予定されていた憲法改正に関する国民投票を中止し、9月6日より国会を再開すると発表した。与党はJVPの協力を得て国会運営を乗り切ろうとしているが、JVPの要求には現在40ある省庁を20に削減するなど困難な政策課題が多く、特に省庁再編に関しては与党内部から強い反発があるため政局の不安定傾向は当分続きそうである。

以上 

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