第12回研究会

開催日2008年2月28日(木)
タイトル「紛争後における小型武器対策プロジェクトの一例:カンボジア」
講師木田泰光氏(外務省軍縮不拡散科学部通常兵器室)

 

 今回で12回目となるJCCP研究会では、JSAC(日本小型武器支援対策チーム)の一員として、2003年より約4年半、カンボジアでの小型武器対策活動に携わった外務省の木田泰光氏に講師としてお話いただきました。JCCPも、カンボジアで小型武器回収啓発と農村開発事業を実施した経験があるため、非常に意義深い機会となりました。



—講義内容—

 小型武器は世界中に拡散し、「事実上の大量破壊兵器」とも言われますが、日本政府はこれまで、国際的ルール作りと被害国現場でのプロジェクトの双方を進める二本柱アプローチにより、この問題に積極的に取り組んできました。

  被害を受けた現場でのプロジェクト実施の一例として、カンボジアの事例を紹介します。内戦が長期間続いたカンボジアでは、その小型武器が広く市民の手に蔓延していました。紛争後も残るこうした問題を解決し、小型武器対策を通じて平和構築を目指すため、日本政府によるプログラムが開始されました。
 紛争自体は終了しましたが、それでも小型武器を必要とする需要要因が、カンボジアでは大きく三つありました。一つ目が、治安の悪さによる自分や家族の安全を自衛する必要性。二つ目が、紛争中に浸透した暴力の文化(武器を使った問題解決など)。三つ目が、武器に付与された「貨幣価値」。
 小型武器回収にはさまざまな方法が考えられますが、このプログラムでは、ワークショップ開催の繰り返しを中心とする啓蒙活動により、住民が小型武器を自発的に放棄するよう取り組みました。その背景として、需要要因の三つ目にあげた、小型武器が「貨幣価値」を持つ現実がありました。カンボジアでは、政府や国際機関、NGOなどにより、武器の「買い取り」や開発プロジェクトとの「交換」(いわゆるWeapons for Development)による武器回収が繰り返し実施されてきました。そのため住民が、武器を保有していれば何かと交換してもらえると理解し、武器を保有する要因(需要)となっていました。そのため、小型武器による悪影響、法律の規定、平和なコミュニティの恩恵などを教育し、武器が不要であることを啓蒙することにしました。  
 同時に、住民の治安を守る警察の能力向上を支援し、行政関係者や警察官、軍人などと住民の間に信頼を醸成する場を提供するなど、治安改善や平和の文化に資する活動も進め、武器の需要要因を削減するよう取り組みました。  

 その結果、最初は「政府は、日本は武器が何丁ほしいんだ?何丁出したら学校を、井戸を作ってくれるんだ?」と、武器の交換条件ばかり聞いてきた住民たちが、最後には、「自分たちにとって最大の開発は、ここに学校が建ったことではなく、武器がなくなり平和になったことだ」と言うようになりました。このことばは、啓蒙活動の最大の成果を良く表しており、非常に嬉しかったのを覚えています。  
 しかし、ここで重要なことは、「交換」による武器回収が間違っていて、「啓蒙」による回収が正しいということではありません。「交換」が機能しうる地域や情勢があれば、「啓蒙」が効果的なケースもあります。(今のアフガニスタンやイラクで「啓蒙」は機能しないでしょう。)小型武器回収といっても、情勢、背景、時代、文化など、さまざまな要因によって効果的な方法は異なるのです。  
 このプログラムを通じ、いくつかの教訓がありました。一つが、小型武器対策は包括的に実施される必要があるということです。特に、回収、破壊、管理は、すべてが考慮される必要があります。
 次の教訓は、小型武器回収での議論と重なりますが、情勢や背景などによって、とられ得る方法は異なり、目的すらも変わるため、現地の情勢にあったプログラム設計が必要であることです。DDRの一部として取り組まれることもあるでしょうし、「交換」や「啓蒙」などの方法が効果的な場合もあります。同じ地域であっても、ずっと同じ方法が機能するわけではなく、常に最適な方法を考える必要があります。一過性の取り組みではないのです。

  もう一つの教訓は、小型武器問題は他のさまざまな問題と関連していることです。特に治安面から、SSRの視点は非常に重要ですが、他にも、開発、教育、ガバナンスなど、相互に影響を与えるものが多くあります。紛争が落ち着くと、そこで取り組みが終了するケースがありますが、息の長い対策が必要です。  
 結局、当然のことですが、どんな現場にでも当てはめられるようなプロジェクト、つまり決まった公式のようなものはありません。現場とそれに対するアプローチはさまざまであり、常に最適な方法を考えていく必要があります。

このページのトップへ

前回の研究会へ | インデックスへ | 次回の研究会へ