コソボ総選挙報告
2001/11/19

1.選挙の概要

 さる11月17日(土)、コソボ総選挙がUNMIK、OSCEなどの主導により実施されました。1999年にUNMIKがコソボ入りして行政を担当してから、昨年10月の地方議会選挙に続いて2度目の選挙であり、初の総選挙です。
 新しく創設される中央議会の総議席は120議席で、そのうち10議席がセルビア系、10議席が他の民族(ロマ、アシュカリ、トルコ系など)に既に割り当てられていることから残り100議席をこの総選挙によって争いました。
 新しく創設される議会によって組織される自治政府に現在UNMIKが担当している行政のかなりの部分が委譲される予定ですが、外交、国防などの分野は依然UNMIKに権限が残り、また新しい議会には独立を宣言する権利は付与されていません。


2.選挙キャンペーン

 約3週間にわたり各党のキャンペーンが行われましたが、特に大きな事件等も起こらずに無事投票日を迎えました。
 昨年度の地方議会選挙で全国的に勝利した穏健派政党LDK(コソボ民主連盟)のルゴバ党首、スケンデライ/セルビッツア市を中心に強い影響力(昨年度の地方議会選挙では80%の市議会議席を獲得、全国では第2党)を持つKLA(コソボ解放軍)の後継組織である積極的独立推進派PDK(コソボ民主党)のタチ党首ともに今回の総選挙を独立に向けた重要な第一歩と位置付け、コソボの独立に向けてわれわれは努力すると訴えました。
 この点で全てのアルバニア系政党は独立という目標で一致しており、それに向けた道筋が政策の違いとなるのですが、昨年度の地方議会選挙のときに見られたPDKの「とにかく独立」という主張はトーンダウンし、LDKと同じように国際社会、とくにUNMIKやEU、NATOと協力しながら独立を目指すという主張になっていた事もあり、各党の具体的な政策の違いというのはあまり目立ちませんでした。
 昨年度の地方議会選挙をボイコットしたセルビア系住民は、ユーゴスラビアのコシュトニッツア大統領とUNMIKのトップであるヘケロップ国連事務総長特別代表との間で、コソボのセルビア系住民が今回の総選挙に参加するという合意がなされたこともあり、ある程度の人数が投票するのではないかと言われていましたが、投票はアルバニア系の独立を助けるだけだと主張するセルビア系住民も少なくなく、ふたを開けて見なければわからない部分もありました。


3.選挙当日の様子

(写真1)人家を利用した投票所

(写真2)学校の入口

(写真3)各部屋の入口

(写真4)内部の様子

(写真5)有権者リストとの照合作業

(写真6)投票する有権者

(写真7)警備担当のフランス軍装甲車

 われわれスケンデライ/セルビッツア市の国連職員は選挙当日、2、3人で1チームとなり、市内の投票所を車で回りました。市の中心部の学校を使った大きな投票所もあれば山道を1時間かけてやっとたどり着く、人家を借用した村の投票所(写真1)などもあり、投票所によって雰囲気はさまざまでしたが、いずれの投票所もOSCEによってスムーズに運営されており、人々は落ち着いて列を作り投票していました。
 Prekaz I Epermという村のAzem Bejta Schoolという学校に設置された投票所では学校の入り口(写真2)、また各部屋の入り口(写真3)ともに人々が列を作り、投票の順番を待っていました。
 各部屋に設けられた投票場所(写真4)はOSCEのスタッフによって運営されており、まずIDカードなどによって有権者リストとの照合を行います(写真5)。その後投票用紙に記入をし、封筒に入れて封をした上で投票箱に入れます(写真6)
 投票所である学校の外側にはKFOR(フランス軍)の装甲車が待機しており(写真7)、やはり日本の選挙とは違った印象をもちますが、投票そのものは非常にスムーズに行われていました。
 投票は朝7時から夜7時までの間で行われ、この投票所を午後4時に訪れた時点で投票率は約60%でした。投票日はラマダン中であったのでこれが投票率に影響するのではという声もありましたが、どの投票所も午後4時現在で60%前後の投票率であったよ???うです。


4.まとめ-選挙結果と今後のコソボに与える影響

 選挙結果については本日(19日)夕刻にOSCEより最初の開票速報が出される予定になっていますが、これは日本のメディアでも取り上げると思いますのでこれを待たずに今回の選挙について簡単にまとめてみたいと思います。
 出口調査ではLDKが約45%、PDKが約25%の票を獲得し、アルバニア系政党が議会の大多数を占めることは確実です。セルビア系政党も約10%の票を獲得したといわれ、既に割り当てられている10議席を含め20議席前後を獲得する模様です。
 今回の総選挙は大多数のアルバニア系住民にとって独立への第一歩と捉えられ、非常に大きな期待をもって実施されましたが、国連はあくまで今回の総選挙は安保理決議1244にあるコソボの「実質的自治」を実行するためのものであるというスタンスを崩しておらず、アルバニア系住民の描く将来像/期待、すなわち「独立」と、国連の考えるユーゴスラビア連邦の枠組みの中での「実質的自治」の間には少なからぬ隔たりがあるように思われます。
 セルビア系住民にとってこの総選挙がもたらす結果は非常に未知数であるように思われます。議会における発言権を得ることによってアルバニア系主導の独立を阻止できると考える人々は今回の総選挙に参加しましたが、選挙に参加することによって既存のUNMIK、NATO 主導のコソボの統治(ユーゴからすれば自国の領土の一部であるコソボに主権が及ばないという異常な状態)を認めてしまうことになり、アルバニア系中心の議会で独立が宣言されてしまえばユーゴからの分離を認めざるを得なくなってしまうと考える人々は今回の選挙に参加しませんでした。
 今回の選挙はコソボ紛争後初の民主的な全国選挙であり、これが安全、平穏に終了したということは高く評価されるべきだと思います。しかしながら民族融和の問題を含め、コソボの将来を決めるにはこれからが本当のスタートであり、コソボの住民および国連はこれまで以上にさまざまな問題に直面していくでしょうし、よりいっそうの両者の協力・努力が必要とされるでしょう。

以上