8月・9月の活動

2001/10/15

 私は現在ITオフィサー、支出担当官、経済発展担当官、そして暫定市長補佐の仕事をこなしています。今月は休暇で不在の同僚の代わりに市民登録担当官(Municipal Civil Registration Officer)としてパスポートの発行なども担当しており、多忙ながらも充実した日々が続いています。
 以下に現在までの活動内容を分野ごとにまとめました。

コンピュータートレーニング

 私が勤務を開始したときには直接の上司である暫定市長(UNMIK Municipal Administrator)が休暇中であったため、とりあえず前暫定市長である井上健さんから言われていた、市役所職員に対するコンピュータートレーニングを開始することにしました。
 まず大まかな時間割を作り、レベルをいくつかに分けました。まったくコンピューターに触ったことのない職員から、ある程度仕事で使用しており、具体的なトレーニングを必要としている職員までいると聞いていたので、それぞれの部局の長(全部で8つの部局、163人の職員)に参加希望者の申込書を手渡し、具体的な参加者のレベル・人数を把握しました。同時に初心者向けコースはある程度まとまった人数を集めて一斉にやらないといつまでたっても終わらないため、そのためのトレーニングの会場探しを始めましたが、幸運にもすぐ隣のユースセンターに7台のコンピューターがある部屋があるということを聞き、早速使用可能か交渉に入りました。本来であれば、青少年のためのコンピューター教室のために使用されるものですが、その時間外であれば若干の使用料(1時間あたり25マルク=約1500円)を支払えば使用可能とのことでした。
 本来このトレーニングに対しては予算が割り当てられておらず、若干の使用料ですら支出が難しいとの事だったのですが、部局長会議(Board of Directors Meeting)で、各部局がこのトレーニングへの参加職員数に応じてコンピュータールームの使用料を負担してもらうことを了承してもらい、予算の問題も解決しました。
 もちろんテキストブック代もないため、私がそれぞれのレベルのテキストブックを、持参した参考書をアレンジしながら作成しました。現在のところ3つのレベル分が完成し、UNMIKローカルスタッフがアルバニア語に翻訳している最中です。


支出担当官

 8月の終わりに井上健さんの後任の国連暫定市長が休暇から戻り、私の職務について話し合いを持ったのですが、その際に私はまだ年齢も若く、いろいろな経験を積んだほうが今後のためになるといわれ、現在市役所の中でもしっかりとした基盤作りが必要といわれている財政部門で、支出担当官(Payment Officer)をやってみろということになり、UNMIKの職員でただ一人財政部門を担当している財政担当官(Budget & Finance Officer)のもと、彼の補佐をする形でいろいろ学びながら職務を行うことになりました。同時に経済発展と暫定市長補佐の仕事も言い渡されましたがこれについては後述いたします。
 この人事の本音の部分は別のところにあると思われ、まずは国連財政担当官とローカルの関係がまったくうまく行っておらず、過去数ヶ月の支出がストップしているという事実がありました。国連財政担当官はとにかく自身の経験に基づいて物事を進め、支出に際してもあらゆる書類を要求しますが、もちろんローカルスタッフはそこまでの能力、および管理システムが出来上がっておらず、しばしば衝突が起きていたとの事でした。そこで国連暫定市長は日本人(日本人は争いを起こさずに物事を解決するのに長けているだろう?と言われました)である私にうまく間に入りながらストップしていた支出を進め、同時に支出のシステムがスムーズに行くよう改善して欲しいと要求しました。若干の仕事に関する引継ぎはあったものの、当然財政担当官が財政に関する権限を握っており、またローカルとの関係がうまくいっていないために暫定市長を交えて何度も話し合いがもたれていますが、解決策や私の職務分担などは依然はっきりしていないため、手探りで仕事を進めている状態です。
 中には3ヶ月も支出が滞っている部局もあり、彼らも新しく支出担当官になった私に当然文句を言ってくるのですが(中には脅してくる人もいる)、私はもちろん3ヶ月前のそれらの支出に関する書類を持っておらず、財政担当官にどうすれば支出ができるのか聞きに言っても「こういう証拠が必要だ。ここがクリアじゃない」。部局の担当者に聞くと「もうそんなものは昔に出してある。説明もしてある」。という平行線のやり取りで、その間を取り持つように少しづつ支出を進めていますが、なかなか容易ではありません。


経済発展担当官

 基本的には数多く進んでいるプロジェクトの管理(といってもぞれぞれの分野の国連職員専門家が技術的にはプロジェクトを管理しているので、それらを全体的にまとめ上げ、経済発展の状況を把握する)が主な仕事ですが、このポストは前任者が引継ぎをしないまま(理由は不明)オフィスを去ったため、コンピューターに残ったファイルを手がかりに情報をアップデートしなければならないという状況です。
 その他にいくつかある工場再建プロジェクト(特に日本政府が約4億円を拠出して実施されているレンガ工場再建プロジェクト)の管理も徐々にですが始めています。


国連暫定市長補佐

 国連暫定市長は、個々の専門家がそれぞれの分野でプロジェクトを進め成果をあげる国連(特にフィールドミッション)の仕組みの中で、それらをまとめた上で大きな視点から次にどの方向に進むべきかという助言をしてくれる職員がほしいと言っており、その役割をすることになりました。特に私が紛争解決の修士号を持っていることと、予防外交を専門とするNGOで働いていたことから、この地で特に難しい民族融和についていろいろなアドバイスが欲しいとの事です。ただし、民族問題についてはすでに担当官(Local Community Officer)が存在し、彼がいろいろなプロジェクトを実施している(といっても民族融和プロジェクトというよりはアルバニア系地域から隔離されたセルビア系住民の生活向上のプロジェクトで、民生安定が民族融和に貢献するという状況からは程遠い)ので、彼が仕事を奪われたとか、競合しているとか思わないよう、独自に調査なり報告なりをするようにとの事でした。この辺にも個人主義といわれる国連の中でいかに暫定市長が組織としてのまとまりを保とうとしているかが見えるような気がします。
 ただし現在までのところ、支出や経済発展の仕事が忙しく、また休暇中の同僚に代わって行っている市民登録の仕事もパスポート(見た目はパスポートと全く一緒ですが正確にはトラベル・ドキュメント)の申し込み書を持った住民が1日中列を作っており、ほかの仕事をしながらも、それらの住民の顔写真や経歴を確認しながらパスポートにサインをしていくという日々が続いており、市長補佐の仕事はそれほど進んでいません。

以上